ニュースやテレビコマーシャルなどで最近、頻回に登場する言葉が健康寿命とかロコモティブシンドロームであると思います。「健康寿命」とは介護・支援を必要とせず健康に暮らせる年数のことであり、一般的には平均寿命より短いです。健康寿命を延伸し、平均寿命とほぼ同じとなるとこが理想であることは当然ですが、平均寿命から健康寿命を差し引いたこのギャップは2005年のデータでは男性7年、女性7.5年とされております。「ロコモディブ」とは本来、機関車という訳語ですのでロコモティブシンドロームを日本整形外科学会(日整会)では、「運動器症候群」と命名しており、略して「ロコモ」と言うこととしております。日整会ではロコモ発症を予防することにより健康寿命の延伸を図ることが広報活動の主要な1つとなっています。
「ロコモ」とは加齢に伴う筋力の低下や関節・脊椎に病気、骨粗鬆症などにより運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになっている、あるいはそのリスクが高い状態と定義されています。現実的に要介護・要支援の認定患者数は飛躍的に増加しており、健康寿命の延伸は日本経済における社会福祉への支出が増大していることからも極めて重要な問題であると考えられています。
ここで介護や支援が必要となった主な原因として関節疾患・骨折・転倒など合わせると25%を占めており、脳血管障害や認知症などとともに3大原因の1つとなっています。これらの意味からも関節疾患を積極的に予防し、かつ適切に対処(治療)することは極めて重要であると考えています。
当センターは、空知地区としては初めての関節外科センターとして2014年12月に整形外科外来に開設されました。変性(加齢)、外傷、スポーツ炎症、先天性など全ての原因によるあらゆる関節疾患が本センターで取り扱う疾患です。上肢では肩関節疾患(肩腱板損傷、脱臼、上腕骨近位端骨折など)、肘関節疾患(変形性関節症、上腕骨遠位端骨折、靱帯損傷、肘部管症候群、テニス肘など)、手関節疾患(変形性関節症、橈骨遠位端骨折、尺骨突き上げ症候群、三角線維軟骨複合体損傷、舟状月状間靱帯損傷、舟状骨骨折、手根管症候群、ばね指、ド・ケルバン病など)、手指疾患(手指骨折、手指靱帯損傷、つき指、ばね指など)、下肢では股関節疾患(変形性関節症、ぺルテス病、大腿骨近位端(頚部)骨折など)、膝関節疾患(変形性関節症、大腿骨遠位端、脛骨近位端骨折、靱帯(側副靱帯や十字靱帯など)損傷、半月板損傷など)、足関節疾患(変形性関節症、内顆・外顆骨折、足関節靱帯損傷など)、足趾疾患(変形性関節症、足趾靱帯損傷、足趾骨折、外反母趾など)など部位的に極めて広範囲であり、かつ疾患の種類も多様な疾患を取り扱っています。
現時点で関節外科センターは東條泰明センター長、三浪明男名誉院長の2名により構成されております。
平成29年度(平成29年4月~平成30年3月)の手術実績ですが、合計415件でした。約9割は全身麻酔で行ったものです。骨折に対する骨接合術、股関節人工関節置換術、膝関節人工関節置換術、肩関節腱板損傷修復術、鏡視下手根管開放術などが多い手術でした。